第11回 設計業務でのAI活用方法は? 実用化が進む領域とは
さまざまな場面で活用が進んでいるAIですが、設計業務でもAIの活用が進められています。AIの重要性は今後さらに増すと考えられ、早い段階で導入を検討したほうがよいといえるでしょう。
しかし、設計業務におけるAIの活用の具体例がわからない、AIを活用するメリットがわからない、という方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、設計業務におけるAI活用が必要とされる背景から、活用するメリットや実用化が進む領域について解説します。
設計業務のAI活用とは
はじめに、設計業務でAI活用が必要とされる背景と併せて、設計業務におけるAI活用の種類を見ていきましょう。
設計業務でAI活用が求められる背景
在の設計業務では、属人化したノウハウが多く効率が悪いなどの課題が存在します。また、ルーチンワークの存在によって新規開発などの本質的な業務の時間が取れない、という課題も抱えています。
設計業務に関わらず、日本の全業務におけるルーチンワークが占める割合は、他国と比較して多い傾向にあり、ルーチンワークを減らして生産性の高い業務に注力することは非常に重要です。
AIを活用すれば、属人化したノウハウを減らして効率性を高められます。AIが学習を続けることで自動化も実現できるでしょう。
人手不足やルーチンワークなどの業務に追われることが多いなかで、業務の効率性を高めて生産性を向上させるためにもAIは必要とされています。
設計業務でのAI活用の種類
設計業務のなかでも、詳細設計や構想設計などでAIは活用されています。詳細設計では物理レイアウトの設計をAIに任せたり、トポロジーの最適化に利用したりしています。
構想設計ではIoTとAIを組み合わせ、市場要求を素早く製品仕様に取り込むことも実現可能です。設計業務におけるAI活用は、設計アイデアの生成からデザイン探索、設計の最適化と幅広く利用されています。
設計業務でAIを活用するメリット
設計業務でAIを活用する大きなメリットとしては、次の2つが挙げられます。
業務効率化により新規開発に時間を割ける
設計業務でAIを活用すると、前述の事例のように大幅な業務の効率化が実現できます。
従業員は流用設計などの業務にかかる時間を別の業務に割り当てることができるようになり、より生産性の高い業務に注力することが可能です。
先程も述べましたが、日本の全業務におけるルーチンワークの割合はG8の他の国と比較して多い傾向にあります。グローバル化が進むなかで諸外国との競争に勝ち残っていくためにも、新規開発などの生産性の高い業務に注力することが欠かせません。
設計業務でAIを活用することで従来の業務を効率化し、よりクリエイティブな業務に注力できるようになることは大きなメリットの一つです。
AI導入の過程で非言語的なルールが明確になる
AIは既製品のソリューションを導入するだけで、最大効果が発揮されるものではありません。企業ごとに異なるルールを作成して学習を続けることで、業務の効率化を始めとするさまざまなメリットを得られるようになります。
AIには学習データと併せてルールセットを与える必要があります。
ルールセットとは設計するものによって異なる「細かなルール」です。このなかには属人化したノウハウなどを含む「現場の勘」も含まれます。非言語的なルールを言語化する作業が必要になります。
AIの導入を通し、非言語的なルールを明確にできる点も大きなメリットといえるでしょう。

設計業務のAI活用で実用化が進む領域
ここでは、設計業務におけるAI活用で実用化が進む領域について解説します。
AI-OCRによる図面のデータ化
図面を紙で保管している企業も多いと思いますが、図面のデータ化はそれをスキャンしてPDFなどで保管するだけでは不十分です。手書きの文字も含め、図面上のさまざまな情報をデータとして扱えるようにする必要があります。
以前からOCR(光学文字認識)による紙情報のデータ化技術は存在しますが、AIと組み合わせることでその精度が向上します。AIによって手書きの字も、しっかりと認識してデータ化することが可能です。また、図面上のさまざまな情報も種別ごとにデータ化して扱いやすくできます。
類似図面の検索
図面をデータ化して保管できるようになれば、AIによって類似図面を検索することも可能です。実際に類似する形状を持つ図面をAIが探し出す「AI類似図面検索システム」も存在します。
このようなシステムを活用することで、図面作成における工数の削減やナレッジの共有・流用が実現可能です。前述のAI-OCRと併せて、図面のデータ化と活用においてAIは欠かせない存在になっています。
AIを活用した流用設計
さらにもう一歩進むと、AIを活用した流用設計の自動化なども実現できます。実績のある製品の設計を用いて、新たな製品の設計に活かす流用設計では、ルーチンワーク的な作業が多く手間がかかるという課題があります。
AIによってそれらの作業を自動化できれば、業務の大幅な効率化が実現できるでしょう。加えて、熟練設計者のノウハウなどをAIが学習していれば、経験が浅い設計者が利用する際にAIがガイドとしてサポートすることで、設計者のスキルアップも期待できます。
まとめ
設計業務では属人化したノウハウが多く、業務の効率性が悪いなどの課題が挙げられるなかで、AIの活用は業務効率化に大きな効果が期待でき、より生産性の高い業務に注力できるようになります。
既にAI-OCRによる図面のデータ化や類似図面の検索、流用設計などでAIの実用化が進んでおり、多くの企業が取り入れています。今後はさらにAIの活用が進むと考えられるため、この機会に設計業務におけるAI活用を検討してみてはいかがでしょうか。