第13回 流用設計におけるAI化の進め方とは?
昨今ではジェネレーティブAIなどの活用が注目を集めています。
あらゆる業界・業種でAIの活用が検討され、製造業においても例外ではありません。製造業でのAI活用の一例として、流用設計の効率化があります。AIを活用した流用設計の効率化では、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。
この記事では、流用設計のAI化に関する概要や進め方について説明します。
流用設計のAI化とは
流用設計は、過去の製品・部品の設計データを流用して新たな製品を製造する手法です。
AI化では、現場ごとに言語化できていなかった細かな設計のルールを「ルールセット」としてデータ化します。そしてルールセットからAIにより新たな設計図や点群データを自動作成します。完全な自動化だけでなく、新人設計者のサポートとして活用することもでき、設計者の育成のための手段としても活用することが可能です。
近年の日本社会は労働人口が減少し、労働力が不足しています。そのため、業務の効率化や生産性の向上は製造業においても喫緊の課題の一つであり、流用設計のAI化はそれらを解決のための手段の一つです。AIをはじめとする新たな技術の利活用は今後も急速に拡大すると考えられます。
しかし、なかなか思うように進んでいないことも珍しくありません。流用設計のAI化に関しては、こちらの記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
流用設計におけるAI化の進め方
流用設計におけるAI化の進め方は、おもに次のフェーズに分けて進められます。導入に至るまでのプロセスは4つあり、1つのプロジェクトは大体1年程度かかります。今後、AI化を検討している場合には参考になると思いますので、一つずつ見ていきましょう。
課題の整理
AIをはじめとする新技術を業務に導入する際には、はじめに「どのような課題があるのか」という点を明確にすることが重要です。業務の効率化や生産性の向上は、とにかく新しい技術を取り入れれば解決するという問題ではありません。
現在の業務全体を見える化し、どの部分に問題・課題があるのか、どのように解決するべきか、という点をはじめに整理する必要があります。はじめに実施するフェーズですが、重要な部分であるため2ヵ月程度はかかるでしょう。
AI化が可能かどうかの検証
現在のAIは完全に人の代わりになるものではありません。特定の分野や作業において効果を発揮するものであるため、前述の課題に対してAI化が可能かどうかを検証します。業務のAI化は高度なプロセスであり、前提として業務のデジタル化・DX化が必要です。
流用設計のAI化の際には、部品や回路などの設計するものによって異なる「細かなルール」を作成しなければなりません。ルールセットを洗い出す作業は「現場の勘」のようなものを言語化する作業であり、数百単位で出てくることもあります。加えて、ルールセットの作成者によってルールの粒度が違うことも珍しくなく、これらをフラットに評価した上でAIを使って対応できるかどうかを検証します。
概念検証となるこのフェーズも時間をかける場合が多く、3~6ヵ月程度をかけてしっかりと検証を行ないます。
要件定義
要件定義はプロジェクトを進めるにあたり、必要な機能や要求をわかりやすくまとめていくフェーズです。AI化を進める際には、次の3点は最低限確認が必要です。
- AI化する作業にどれくらいの時間がかかっているのか
- データが揃っているか
- 自動化すべき部分なのかの見極め
これまで行っていた作業が、月・年単位でどれくらいの時間を費やしているのかを事前に把握しておけば、その後の効果測定もしっかりと行なえるでしょう。
次に、AIはデータを取り込んで意思決定を行ないますが、そのためのデータが揃っているか否かによって対応は大きく異なります。そもそもデータとして存在しているのか、存在しているデータは有用か、といった部分を中心に確認しなければなりません。
最後に、そもそも自動化すべき部分(作業)なのかを見極めます。どれくらいの時間がかかっているのかという部分と共通しますが、AI化・自動化は業務の効率化や生産性の向上を目的としているため、大きな効果が得られる部分を見極めることが重要です。
これらの箇所を確認した上で、具体的にどのような仕様にするのか、どのように運用していくのか、といった部分を2ヶ月程度かけて詰めていきます。
システムの実装
要件定義で定めた内容を元に、システムを構築・実装していくフェーズです。より細かく見ていくと、要件定義からシステムの設計を行ない、実際に構築してテストを行う、という流れとなるため、4ヶ月程度をかけて実装していきます。
システム設計時にはわからなかった不具合なども見つかるため、要件定義で定めた目的・目標を達成できるように随時修正しながら進めていきます。システムを実装するにあたり、AI化で重要となるデータの準備も必要です。クライアントにとって、このデータの準備が最も大変な作業となるでしょう。
システムの保守
ここまでで約1年かけてシステムを実装していますが、システムは実装したら終わりというものではありません。定期的なメンテナンスや不具合時の対応も必要になるため、その後はシステムの保守フェーズに移行します。
システムが不具合を起こした際や、システムを構成する機器の物理的な破損などが発生した際に、どこに連絡を行い、どの程度で復旧できるかを事前に定めて確認しておくことが重要です。システムの保守は軽視されがちですが、業務の根幹を成すシステムが不具合を起こすと業務が滞ってしまうため、しっかりと事前に準備して有事の際にも対応できるようにしておきましょう。

流用設計のAI化においてはデータが鍵を握る
ここまでにも触れてきた通り、流用設計のAI化においてはAIが取り込むデータが非常に重要です。クライアント側が用意するデータの精度が、プロジェクトの成否を分けると言っても過言ではないでしょう。
AI化は業務の効率化や生産性の向上を目的としたものであり、さまざまなコストの削減も期待できます。しかし、クライアント側でデータを蓄積して活用できるようになっていなければ、データを集めるだけでも多大なコミュニケーションコストがかかるため注意が必要です。その一方で、DX化が進んでいる企業はデータの蓄積ができており、AI化のためのデータも集めやすいという特徴があります。
このことからも、アナログな業務環境からいきなりAI化を進めることは難しいといえます。そのため、業務全体の可視化やデジタル化を進めていくことが重要です。一度にすべてをAI化することは難しくとも、部分的な効率化であれば可能です。
AI化を進める際には、スモールスタートで進めて効果測定を行ない、少しずつ全体に広げていく進め方も検討するとよいでしょう。
まとめ
流用設計のAI化は、業務の効率化・生産性の向上だけでなく、AIのサポートによる設計者育成のための手段としても活用できます。この記事では、流用設計におけるAI化の進め方についても解説しましたので、ぜひ参考にしてください。
AI化は高度なプロセスであり、前提として業務のデジタル化・DX化が欠かせません。デジタル化やDX化が進んでいないという企業であっても、テクノプロ・デザイン社のサービスを導入することでDX化からAI化まで対応できる可能性があります。
DX化やAI化を検討している場合には、一度弊社までお問い合わせください。