第15回 開発・設計業務の未来像を探る

近年、私達の生活の中にも、様々な分野でAI活用が進んでいます。

製造業においてもAI活用は注目されており、開発・設計業務もAIの活用によって大きく変わると予想されています。

しかし、製造業や設計業務において、AIの活用でどのように業務が変わるのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。

今回は、製造業におけるAI活用を通して、開発・設計業務の未来像についてお話しします。

AIの活用で製造業にイノベーションを

近年の日本社会は少子高齢化が進み、15~64歳の人口を示す「生産年齢人口」は年々減少しています。生産年齢人口は1989年には8,552万人でしたが、2019年には7,510万人と1,000万人以上減少しました。一方で労働力人口は過去20年間横ばいですが、これは65歳以上の高齢者の労働参加が増えていることが要因の一つです。*

日々変わり続ける社会情勢のなかで、柔軟に対応可能な労働力は減少傾向にありGDPも低迷しています。このような状況のなか、日本の製造業全体が厳しい環境に置かれているといえるでしょう。

製造業においても人手不足は深刻化していますが、その要因の一つになっていると考えられるものがルーチンワークの存在です。日本の全労働におけるルーチンワークの割合は7~8割といわれており、業務の効率化や生産性の向上のためにはルーチンワークへの対応が欠かせません。

例えば、GDP世界一位のアメリカではルーチンワークよりも創造的な仕事が多位と言われています。

GDP向上のためには生産性の高い業務に注力する必要があるといえますが、昨今の日本の環境では、ルーチンワークをこなすことで精一杯の状況です。

そこで注目されているものがAIの活用であり、ルーチンワークのような単純作業をAIを使用して自動化したり効率化することで、創造的な仕事やサービスを生み出す時間を作り出せるようになります。

テクノプロデザイン社が手掛けた、流用設計のAI化では、設計にまつわる細かい業務に180時間/月も単純作業が発生していたケースを、AIの活用により90時間程度まで削減した事例もあります。

 

労働力人口・就業者数の推移:構成労働省

AIとの共存

AIの導入と聞いて「仕事を取られるのではないか」と心配する方もいるかもしれません。しかし、AIは万能なツールではありません。

特定の分野において正しいデータを用意し、正しい使い方をすれば高い効果が得られる、というものがAIです。

AIはあくまでも業務をサポートする存在であり、上手に付き合うことで生産性が高まります。つまり、これから求められるスキルは、AIを使いこなす・AIと共存するというスキルです。

AIと上手に共存できるようになれば、例えばこれまでは数年経験を積まないと設計することが難しかったものも、AIのガイドを使うことで今までよりも短時間でに設計できるようになります。AIの存在をネガティブに捉えるのではなく、AIと上手に付き合える人こそがこれからの製造業を牽引していく存在になるといえるでしょう。

AIによる省力化でより本質的な設計が可能になる

製造業における設計業務では、AIの活用によってより本質的な設計が可能となります。

つまり、コストや時間などの様々な制約に縛られずに「ユーザーにどのような価値を提供できるか」を念頭に置いた設計が可能になるということです。

よりユーザー目線の設計に注力

設計の本質は「ユーザーのために」どのような機能が必要なのかを考慮することにあります。しかし、前述のとおりルーチンワーク化された業務に追われるなかでは本質を忘れてしまうこともあるでしょう。

AIによって設計のサポートや効率化を実現すれば、時間のリソースが潤沢に使えるため、設計者はよりユーザー目線の設計に注力できるようになり、設計の本質部分に注力できるようになるというわけです。

既存の枠組みを超えた設計

AIを利用するためには、多くの学習データが必要です。設計業務においては、設計する物事に異なる細かなルールを「ルールセット」として作成し、AIに学習させる必要があります。ルールセットを洗い出す作業は「現場の勘」を言語化するような作業であり、時には何百単位で出てくることもあるため、非常に大変な作業です。

AIはそのようなルールセットにしたがって設計の自動化やサポートを行ないますが、学習を続けることで、人間では思いつかなかったようなアプローチの設計が行なわれる場合もあります。

そのような部分に創造性のヒントがあると考えられ、AIを活用する上での大きなメリットの一つになっているといえるでしょう。

【コラム】AI/データサイエンスと流用設計 第15回

まとめ

人手不足が進む製造業においては、AIの活用は喫緊の課題の一つになっています。今後はAIによって業務を効率化させるだけでなく、生産性の向上やイノベーションの実現が求められているといえるでしょう。

AIの導入のためには、DXの推進やインフラの整備などの下地が整っている方がスムーズです。いきなりAIを導入してすべてを自動化する、ということは難しいため、スモールスタートでできるところから少しずつ対応していくことをおすすめします。テクノプロ・デザインでは、課題をヒアリングして費用対効果を見積もりながら「手早く効果的に自動化できる部分」を洗い出す提案をしています。

よりクリエイティブな作業に注力できるような環境づくりを支援しているため、ルーチンワークの削減などに興味がある場合は一度お問い合わせください。