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エンジニアリング

名古屋大学 大学院情報学研究科附属組込みシステム研究センター様との自動車セキュリティプロジェクト

名古屋大学 大学院情報学研究科附属組込みシステム研究センター 様

はじめに

産学連携をテーマに組込み技術システムの開発、人材教育拠点としての諸活動を展開する、名古屋大学 大学院情報学研究科附属組込みシステム研究センター様(以下NCES)。
テクノプロ・デザイン社は、サイバーセキュリティ事業を展開していましたが、自動車分野でのセキュリティ技術のニーズの高まりを受けて、その知見をさらに高めるために、NCESに所属する自動車セキュリティ分野の第一人者にお声がけし2017年に「産学連携プロジェクト」をスタート。2022年10月に名古屋大学にてNCESのシンポジウムでも発表を行い、12月には成果の一つとして「セキュリティ教育資料」を開発し、人材育成セミナーを開催しました。このプロジェクトの概要を紹介します。

プロジェクト概要

あらゆる業界においてサイバーセキュリティ対策が必須となっている昨今、テクノプロ・デザイン社としても、サイバーセキュリティ対策のコンサルティングやトレーニングなどの各種サービスを幅広く展開している。こうした産業界での実績と、NCESの自動車組込み技術によるセキュリティの知見を合わせることで、イノベーションを起こし、各種産業機器に対して新しいセキュリティサービスの展開へと踏み出している。

産学連携が生み出す価値

クライアントの利益を達成するために、共同研究をスタートアップ。

テクノプロ・デザイン社は、ニーズの高まるサイバーセキュリティ対策に向けてコンサルティングからSOC対策の人材育成など、あらゆる面でのサービスを展開している。
しかし、それはあくまでもIT領域での実績に過ぎず、自動車など各種産業機器への横展開は知見が少ないため難しい状況だった。そこで、国内でも自動車セキュリティ領域でトップクラスの知見を誇るNCESに声をかけ、産学連携プロジェクトをスタートアップすることとなった。

当プロジェクトにてオブザーバー/マネジメント兼エンジニアを担う富原は語る。
「当社のアライアンス理念に『課題解決をテクノプロ・デザイン社だけで行う必要はない、最終ゴールはクライアントの利益を達成すること』とあります。今後増えてくるニーズに応えるために、少ない知見については積極的に学びに行くのが当社の姿勢です。NCES様には自動車セキュリティの先端技術とノウハウがあるため、共同研究を当社から提案しました」

産学連携_事例01

NCESからは、車載制御システムのセキュリティ対策技術の第一人者である准教授、倉地亮氏と、組込みシステムの研究を手掛けている研究員、高田光隆氏が参画することとなった。
倉地氏は産学連携を進める上で、アカデミック側からの側面でも面白いところがあると話す。
「大学の研究室に在籍する学生は、研究室内で最先端の情報セキュリティ技術に接する機会があったとしても、産業界でそれがどのように理解され、どう使われようとしているのか、実際に目にする機会は少ないです。しかし、研究の目的や命題の一つとして、研究成果をどのように社会に対して生かしていくべきかを考える視点も非常に重要だと思います。そのため、産学連携プロジェクトは研究者・学生にとっても非常に有意義な機会となります。お互いのシナジーを創出することで、社会に対してイノベーションを起こすきっかけにつながると思いました」

産学連携_事例02
(左より、倉地亮准教授、高田光隆研究員)

こうした始まったプロジェクトは、自動車のサイバーセキュリティ及びソフトウェア更新に関する規制への対応が義務化されたことも後押しとなり、セキュリティ技術の学習プログラム構築やサイバーアタックの際のセキュリティ実証実験など、より広範囲かつ具体的な研究へとつながっていった。
「産学連携の良いところは、通常のプロジェクトでは得られないようなヒントを多くいただける点です。こんな論文が発表されていますよとか、先端技術は今、こんな局面まで進んでいますとか、企業同士ではなかなか出てこない情報を共有いただきながら一緒に考えていける。テクノプロ・デザイン社としても非常に意義の深い事例になったと思います」と富原は語る。

産学連携の成果

内外の研究者が集まるシンポジウムにて、産学連携の成果を発表。

2017年から開始した産学連携プロジェクトは、2022年現在は以下の成果を挙げている。

セキュリティ教育資料の作成

「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)」での講義資料をベースにしたNCES様主催のセキュリティ講座を当社エンジニアが受講し、その知見を活かしながら社内/社外向けに教育資料を作成した。
(12月初旬に開催された自動車技術会でのセミナーで活用)

車両テストベッドの構築

サイバー攻撃の実証実験に使用するプラットホームとしての車両テストベッドを、クラウドもしくはオンプレミスで構築疑似サイバーアタックb)脆弱性調査/フォレンジックc)実際のサイバー攻撃の再現などの実証実験を行うもの。

特定ユースケースでのセキュリティテスト

OTAによるソフトウェアアップデート(Uptane準拠)に対するセキュリティテストを実施

富原は、サイバーセキュリティ対策についても徹底して学んでおり、このプロジェクトを、こう振り返る。
「私の中で大きなインパクトとして残っているのはOTAによるソフトのアップデートにおけるセキュリティテストの業務です。その解析手法や手順も含めてどのように表現すれば分かりやすく説明できるか、アウトプットイメージを打ち出すのが苦労しました。しかしこの経験は、サービスを受ける側の視点から開発を考えるきっかけにもなりました」

クライアントのニーズが明確で要件定義から入っていき各フェーズごとに遂行する開発プロジェクトとは異なり、自分たちでゴールを設定し、どんな技術をどのように使っていくかをアカデミックの視点と産業界の視点の両軸で考えていくことが必要となる。手順が違うからこそ、エンジニアとしての更なる成長にもつながったという。

NCES主催のシンポジウム

2022年10月30日、国内外から組込み技術の研究者が集う、NCES主催のシンポジウムが行われた。

そこにテクノプロ・デザイン社が登壇し、産学連携の成果の一つとして、当プロジェクトの概要やセキュリティ人材育成に向けた教育資料・セミナー開催の旨を発表することができた。

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(登壇:テクノプロ・デザイン社 モビリティ統括部 小久保)
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今後、テクノプロ・デザイン社に期待すること

「先端技術の知見」×「エキスパートの育成・伝承」この2つがイノベーションを起こす淵源となる

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高田氏は産学連携についてこう考えているという。
「アカデミックな視点からは産業界で進められているテーマやサービスの展開について直接、研究員や学生が学び、触れる機会があるのは大きなメリットです。一方、産業界からの視点で考えると失敗を恐れずに研究を進めることができ、仮説から検証、改善までの一連の流れを経験できます。ビジネスの世界ではスケジュールや予算管理が厳しい中で、何度も検証を繰り返すことも制限されますが、研究所であれば『失敗』とみられることも次の成功へとステップにできる。お互いにとって大きなメリットやシナジーは生み出しやすい環境にあると思っています」。

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一方倉地氏からは、産学連携の社会的意義について語ってもらった。
「普段の企業のプロジェクトだけでは世界の最先端技術の情報を入手して、それをどのように活かせるかを検証するのは時間的にも難しいと思います。しかし産学連携では、立ち位置の異なる2者が同じベクトルを目指すことで、企業側には普段得られないような情報や考え方をブラッシュアップできますし、アカデミック側としてもここで培った知見を別の研究テーマにも活かし、セキュリティ技術の人材育成や伝承が実現できます。このプロジェクト含め、好事例を積み重ねてNCESから世界へ発信してみたいですね」

最後に

NCES様との産学連携は、テクノプロ・デザイン社にとっても大きな可能性を示す事案となった。今回のようなサイバーセキュリティ分野はもちろん、今後さらにニーズの高まる技術領域においても、テクノプロ・デザイン社が持つ「人材育成ノウハウ」や「豊富なソリューションの提案・実績」に基づいた実行力を駆使し、大学など研究機関が担う先端技術分野における先進的な取り組みとコラボレーションすることが増えてこよう。
そこに関わるエンジニア個人としても、想像を超えるようなキャリアパスの描き方が見えてくるはずだ。

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