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2020.11.17

《連載》テクノヒントオーディオ倶楽部~エンジニアが語るマニアックな音響世界~第四回YouTubeが音質劣化する原因と改善の試み

#オーディオ #ラズパイ #JAZZ #エンジニア #趣味 #ワークライフバランス

技術力を趣味に生かして人生を楽しんでるエンジニアがいます。

技術力を趣味に生かして人生を楽しんでいるエンジニアがいます。
テクノヒント オーディオ倶楽部~エンジニアが語るマニアックな音響世界~では、技術分野を活かしていかにして「音」を極めていくかを連載でご紹介します。
今回は半導体技術を持つテクノプロ・デザイン社の河村氏に、YouTubeの音質を最大限高める方法についてご紹介していただきます。

話者紹介

河村 哲哉

半導体開発技術者としてAV用半導体を開発。2000年台に7年間中国赴任。 現在は採用、教育研修などの業務を担当。
趣味はオーディオ、語学、マラソン(現在は休んでいます)

YouTube再生への不満

ハイレゾ再生環境導入後、PCやRaspberry piを使った音楽再生には満足していたのですが、YouTubeの音には非常に不満でした。
YouTubeは最新のmvが無料で見られるしLiveや古い音源などのレアな音源も多くて、頻繁に利用します。
YouTubeの音声は圧縮されているので、非圧縮のオーディオファイル再生よりクォリティが落ちるのは仕方がないのですが、それでももっとよくなると感じてました。
PCのオーディオ再生時はAudirvanaという音楽再生ソフトを使用し、YouTubeはブラウザーのChromeを使用しています。
YouTubeとクォリティが同等なはずのMP3をAudirvanaで聴くと、やはりAudirvanaの方が相当良い音です。Chromeで聴くYouTubeの音は生気のないさみしい音に聴こえます。

Windowsカーネルミキサー

Chromeでの音質劣化の原因の一つはWindowsカーネルミキサーと呼ばれるWindowsのオーディオシステムです。PCでは複数のアプリケーションからの音をミキシングする必要があるのでWindowsカーネルミキサーで下記の処理をしています。

  • ①SRC(サンプリングレートコンバータ):複数のアプリケーションからの音のサンプリング周波数を決められた周波数に変換して合わせます。
  • ②リミッター:ミキシングした音のレベルが最大レベルを超えないようにミキシングします
  • ③ミキシング
  • ④ボリュームコントロール

①~④の処理はどれも音質を損ないます。音質を重要視する場合カーネルミキサーは好ましくないので、WASAPIとASIO(コラムにて後述)というカーネルミキサーを使用せずにUSB DACに出力する方式が規定されています。高音質のオーディオプレーヤー(例えばAudirvana, Jriver Media Center等)はどれもWASAPIとASIOが使用可能ですが、ChromeやEdge等のブラウザーはどちらも使用できないようです。

Chromeのままでできる音質改善

Chromeを使用したままできる音質改善の方法として下記をやってみました。

     
  • SRC対策
    Windowsのサウンドの設定で元のソースと同じサンプリング周波数を指定する。
  • リミッター対策
    下記のパッチをあてる(自己責任で)
    https://kawamoto.no-ip.org/henteko/myapp.html#dpeaklim
  • ミキシング対策
    Windowsのサウンドの設定で標準のオーディオ出力をパソコンのスピーカー、Chromeのオーディオ出力だけをUSB DAC、Chromeの不要なTabは閉じる。Chrome以外のアプリも閉じる。
  • ボリュームコントロール対策
    Windowsのボリュームコントロールを100にする。

これで相当良くなると思ってたんですが、満足するレベルまでいきませんでした。

Foobar2000の導入による音質改善

音は良いんだけど①のSRCが入っているのがやはり気になるなあと思っていたのですが、しばらくしてFoobar2000(無料)というソフトでもYouTubeが見られるという情報をみつけました。Foobar2000はWindowsで使用できる最も有名なオーディオプレーヤソフトで、WASAPI/ASIOも問題なく使用できます。

Foobar2000の管理画面

Foobar2000はプラグイン形式のメディアプレイヤーで必要なコンポーネントを取捨選択することで、foobar2000をシンプルにも高機能にもできます。
もともとはオーディオのみの機能でしたが 、サードパーティー製のコンポーネント開発によりビデオファイルやYouTubeも扱えるようになっていたのでした。ビデオ再生、YouTube再生、ASIOの使用などそれぞれプラグインが必要なので少しややこしいです。
導入した効果は①~④の課題はすべてなくなり、音質もばっちりでした。使い勝手はChromeと比べると相当落ちるのですが。。。音質優先で我慢しています。
PCにDACをつないでYouTubeを聴く方は試してみてはいかがと思います。

コラム1:WASAPIとASIOについて

前述のWASAPIとASIOについて補足説明です。
ASIO(エイジオ)とWASAPI(ワサピ)と私は発音していますが、正しいかどうかは自信ないです。
(ASIOはウィキペディアを見ると「エイシオ、アシオ、アジオ」と表記があり正確には分かりません。)
どちらもWindows PCでDAC(正確にはDACドライバー)にデータを渡すときの規格(オーディオのAPI/ Application Programming Interface)です。
これらを使うためにはWindowsのアプリケーション(例えばFoobar2000)がASIO、WASAPIに対応している必要があります。
使用時はアプリケーションの出力設定画面で標準の出力からASIOまたはWASAPIを選ぶ必要があります。 (対応していないChromeはASIO/WASAPIを選べない)
使用時の経路に関してChromeでYoutubeを再生する場合とFoobar2000で(ASIOまたはWASAPI)を比較すると
  Chrome → Windows カーネルミキサー(ここで音が悪くなる) → DACドライバー   Foobar2000 → ASIO(またはWASAPI) → DACドライバー
という違いになります。

コラム2:Foobar2000のインストール

Foobar2000でYouTubeを見るとき必要なものを紹介します。
①Foobar2000
https://www.foobar2000.org/download
②LAVfilter
https://www.gigafree.net/media/codecpackage/lavfilters.html
③YouTubeのプラグイン
http://fy.3dyd.com/download/
④Videoのプラグイン
https://hydrogenaud.io/index.php?topic=113166.0

インストール方法は下記を参考にしてください http://itnow.blog.jp/archives/1023703378.html

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