2019.10.17(更新日2020.04.01)
中田喜文の「エンジニア。データからはこう見える!」「私は、42歳。」さて私は誰でしょう?
#エンジニア人口 #中田喜文
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2019.10.17(更新日2020.04.01)
#エンジニア人口 #中田喜文
同志社大学STEM人材研究センター長の中田喜文です。同大学で技術者について研究をしています。本コラムでは、日々技術者について研究を進める中で出会った色々な数字を、毎月1回程度ご紹介します。ただご紹介するだけではつまらないので、皆さんも少し考えてみてください。
では早速クイズです。
今月のクイズは簡単ですね。
そうです、皆さんです。
Vol.1では、日本には約300万人の技術者が働き、全就業者に占める割合は4.6%であるとお話ししました。その300万人の技術者の平均年齢が42歳です※。
「お、高いな。」と思いますか、いやいや「思ったより若いな。」と思いますか。
多くの日本企業は、退職年齢を65歳に引き上げようとしています。さらに年金財政を考えて、政府は、将来的に70歳定年制への移行を誘導したいと思っているようです。すると、42歳は、まだまだ若いと言えそうですね。
※ 2017年で、男女計で42.2歳、男性43.0歳、女性36.2歳です。
出所:平成29年就業構造基本調査、総務省
過去20年を振り返ると、日本の技術者の年齢構成は大きく変化し、平均年齢も上昇してきました。この変化を男女に分けて示したのが下の2枚の図です。
最初の図は、男性技術者の年齢グループ別の割合(%)を、1997年、2007年、そして2017年の3か年について表しています。この図から、20年の間に、年齢分布割合の最大グループが20歳代後半から40歳代前半に移動すると共に、若年グループへの集中から、より広い年齢グループへの分散に移っていることがわかります。そして、この移行とともに、男性技術者の平均年齢は、38歳から43歳に高まりました。
では、女性技術者はどうでしょう。
一見すると男性とは異なる年齢分布のように見えます。
確かに女性技術者においては、この20年間、年齢分布の最大グループは、20歳代後半のままです。しかし、それ以外の20年間に起こった変化においては、女性も男性と酷似しています。先ず20歳代後半グループの割合は、1997年の40%から2017年の21%へ、ほぼ半減しました。他方、30歳代前半から40歳代前半を合計するとその割合は、30%から50%に大きく増加しています。女性技術者の年齢構成も、この20年間で20歳代後半への一極集中から40歳代前半までの幅広い年齢グループへと分散し、年齢の多様性が大きく高まっています。その結果、女性技術者の平均年齢も30歳から36歳へと上昇しました。
以上の男女技術者におけるこの20年間の年齢構成変化と平均年齢の上昇はどの様に評価できるのでしょう。日本人口の少子高齢化と同様、懸念すべき社会経済問題なのでしょうか。
いいえ、人口の少子高齢化と技術者の年齢構成の変化は全く異なる現象です。
1つには、人口の少子高齢化の最大の問題は、働かない人、つまり非労働力の増加です。しかし、技術者における年齢構成変化は、現役で働いている技術者の中での変化です。技術者数について見ればむしろこの20年で、240万人から300万人へと、27%も増加しました。
2点目は、人口の高齢化は、年齢構成における65歳以上の年齢グループへの集中現象ですが、技術者の年齢構成の変化は、その逆の分散化です。技術者の年齢構成の多様化が、若年層への集中より、価値やイノベーションの創出において望ましいことかどうかは、学者の間でも議論は分かれるところですが、技術者が経験を積み、その経験が知識に転換されれば、彼らの生産性は上昇します。
しかし、今日、様々な技術分野で、その変化はスピードを増しています。昨日の経験を、明日の課題解決に役立てるには、新たな技術と知識の獲得は、必要条件です。
いつまでも学び続けることの大切さ、一層高まっています。