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2020.12.14

家族から技術者派遣への入社を反対される理由から分かった技術者派遣の働き甲斐とは ~調査報告~技術者派遣を「家族」はこう見ている

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「技術者派遣」のイメージ

技術者派遣は「有期雇用の派遣」と一括りにされがちだが、技術者派遣はその実態が「正社員」という点で働き方が大きく異なる。
しかし、この業界は特に誤解が多い、と業界関係者は言う。
かつて「派遣切り」など、「派遣」という言葉からくるイメージがあまりにもネガティブに報道された経緯があり、「給与が悪い」「不安定」などあまり良いイメージをもたれない。
人材派遣市場全体で6.4兆円のうち、技術者派遣市場は約1.8兆円と推計され、その規模は大きく、また社会で重要な役割を果たしている。

にもかかわらず、技術者派遣の実態、特にそこでの就労状況や業態を正しく世間が理解しているとはいいがたい。 今回は、技術者派遣で働く技術者と世間、とりわけその家族とのかかわりの話である。

アンケートに見る技術者派遣で働くエンジニアの実態

まずは大手技術者派遣事業を営む株式会社テクノプロ テクノプロ・デザイン社が技術者社員を対象に実施したアンケートの結果を見てみよう。

<回答数2020名>

【アンケート1】入社の決め手はなんですか?

【アンケート2】アウトソーシングで働く魅力は?

【アンケート3】技術者派遣である当社に入社するにあたり懸案はありましたか?

【アンケート4】あなたの家族(友人)から見た派遣業界のイメージは何ですか?

派遣業界に就職することの意外なハードル

技術者派遣で働くエンジニアは「入社するにあたっての懸念点」について「安定性」をまず挙げた。
この問いは「入社前」の気持ちがどうだったかを調査したもの。
つまりこれは前述のように「一般的な派遣」と「技術者派遣」の違いに理解が進んでいなかったからだろう。
この回答は派遣ゆえの「常に派遣先で仕事ができるかどうか不安」という派遣先が安定的に供給されないのではとの思いも含まれる。
技術者派遣の場合、仕事がない=直ちに失職、ではない。しかし、仕事が得られない不安感は、失職と同様の喪失感を技術者社員が持つのも理解できる。
テクノプロでは、人にもよるが、派遣先との契約終了後、次の派遣先が直ちに決まらない場合、その期間は研修等で自己研鑽に勤めるための時間として活用されるそうだ。これも一般の製造業やサービス業には無いユニークな取り組みと言える。
ここで注目したいのは、「家族(友人)からの派遣業界に対するイメージの悪さ」を回答したものが、実に35%もいることだ。
【アンケート3】の回答で
・「安定性に対する不安」は業界にいだく世間のイメージや口コミを妄信したもの
・「給与に対する不安」は未就業の状態で誰しもが抱える漠然とした未来の不安

いずれも証拠や具体性を伴わないと私は解釈する。
しかしながら、家族(友人)からのイメージについては、実際に「派遣で本当に大丈夫?」と反対や懸念を示された現実を物語る。
これでは、せっかく技術者派遣の働き方を選択したいと思っていても、気持ちよく入社することができない。人によっては就職先として断念することもあるだろう。
また、就職先を自慢したいという気持ちはだれしもあるが、「派遣」と枕詞がつくことでこれが叶わないと感じているのではないだろうか。
技術者派遣のイメージの悪さは想像以上に根深いことを知り、その考察をさらに次章にて深めたい。

家族の反対は如何にして起こるのか

「正規雇用とはいえ派遣社員なので、家族等から心配される。」
「自分自身は気にしていないが、やはり友人、家族には心配されていることと感じる。」
という意見がアンケートにあった。
上述の【アンケート4】「家族(友人)から見た派遣業界のイメージ」でも大半はネガティブな回答だ。
家族の反対はなぜ起こるのか、説明を尽くしても納得はできないのだろうか?
何が問題なのか、テクノプロ・デザイン社のリクルーターに話を聞いた。
「反対するのは求職者の奥様が多い。」
とし、
「問題は給与。大手の製造業に勤めていた方だと、年収が下がることがある。これは給与形態の違い、初年度にボーナスが出ないなど一時的なものであることが多いのだが・・・。」
とのこと。
技術者派遣に転職を考える人は、前職が製造業であることが多い。個人差、企業差あるものの製造業の給与は安くはない。それが人員の取り合い激しい大手の技術部門出身者であれば想像に難くない。
目先の収入減は、生活を切り盛りする奥様からすると受け入れにくいことなのかもしれない。
前述の【アンケート1】で、アウトソーシングへの入社の決め手として「様々な業界・職種・製品を経験できる」「取引先が魅力的」「やりたい業務に携わることが出来る」といった仕事に対する「やりがい」が上位を独占していた。
そこに、転職に「給与」を期待する家族・奥様とのギャップがある。

多様な働き方に期待して技術者派遣を自ら選択したのに、そのこととは別の理由(つまり、給与面)で、自分ではない他の者の意見として入社を断念したエンジニアは多いだろう。
これはテクノプロ・デザイン社だけではなく大小問わず技術者派遣企業共通の事象かと思う。
一方、アンケートにはこんな回答もあった。
「一般的に、派遣=派遣切り というイメージが大きく、家族に心配される。なので自分は、家族に「常に勉強を続けていれば問題を乗り越えられる」というイメージを繰り返し植え付けている。」
「様々なことにチャレンジできる(家族からは、仕事を楽しんでいると感じるそうです)」
苦労しつつもなんとか折り合いをつける人。入社後に本当にやりがいを見つけ家族を安心させる人。
このように「働いてみると、技術者派遣の醍醐味は給与やイメージとは別の部分で満足感をえられる」という意見も見られる。
しかしそれをもって家族からの心配は「杞憂だ」として放置しておけない。金銭的な問題は依然存在するからだ。 これに対し、前述のテクノプロ・デザイン社のリクルーターに話を聞いてみた。

本当に収入は「悪化」するのか

【アンケート4】にも「低賃金、昇給しない」と考える家族が60%を超えている。
その問題となる「収入」についてどのように説明しているのか伺ったところ意外な答えが返ってきた。
「年収面の心配に対して、「生涯年収」で考えた場合、収入は「上回ることがある」と伝えています。」
どういうことかというと、「役職定年」の存在だ。
一定年齢に達した場合、役職を解かれるという制度で、これは企業規模が大きいほどこの制度を導入している比率が高い。特に500人以上 の企業では、4割弱の企業が導入している。※1 対象年齢は55歳が最も多く、9割が年収ダウンし、50~75%減少した人が30%を超えるという。※2 一方、技術者派遣は事業の性質上「役職定年」は存在しない、少なくとも前述のテクノプロにはこの制度はない。 つまり、そのまま働き続けた場合、55歳~、早いと50歳未満でもぐっと年収が下がり、そこから定年まで積算した生涯年収は、役職定年のない技術者派遣のほうが上回るケースがあるというのだ。(もちろん個人差がある。)

雇用のリスクが少ない技術者派遣

収入に関してはまだある。「雇用」の問題だ。
【アンケート4】でも「派遣切りのような雇用の不安定さ」をイメージしている家族が70%にものぼる。
一般的に、ある分野で景気悪化が見られると、そこに関わる技術者の雇用は危うくなる。
景気悪化だけではなく技術革新により「不要」とされることもある。それが特定の製品やジャンルに特化する製造業に従事する場合、このリスクは大きく存在する。つぶしの利きにくい技術者の泣き所だ。
一方、技術者派遣では多様な職種の企業のアウトソーシングを請け負っており、さまざまな分野の仕事がある。転職をすることなく仕事を変更できる、すなわち技術者派遣が景気への変動対応力が高い理由の一端を示す。
実際、前述のテクノプロ・デザイン社では新型コロナウイルスの蔓延による雇用の縮小は執筆時の2020年末時点では目立った動きは無い。

家族の反対を説得する「収入」以外の理由

繁忙期がある製造業では、特定の時期に忙しくなる。企業や業種により様々だが製造業に働く技術者は時間に追われやすい。
対して技術者派遣の場合、事前に契約時間の取り決め等がなされ、労務管理は比較的厳正に行なわれる。
家族の目線としても、技術者派遣は「残業が少ない」と感じている。(「【アンケート4】あなたの家族(友人)から見た派遣業界のイメージは何ですか?」の「残業が多い」の回答が10%に留まっていた)
このことから長時間労働にさらされる危険性が少なく、健康面に配慮できる、というのは家族への説得には奏功することが多い。

最後は本人の意思

製造の現場を知らない家族からすると、収入面こそが判断基準になるのは自然な成り行き。しかし、その上でモノづくりに関わり続けるという「やりがい」に重きを置く技術者ならば、技術者派遣こそが最適な職場だ、と考える人は多いだろう。

製造業の現場では、設計部門をアウトソースするなど、技術の空洞化が進んでいて、製造業の社員は工程の管理監督に専念することが多い。もちろんコアな技術は依然プロパーで占められるが、管理ではなく継続して技術に携わりたい、と考える技術者なら脳裏に技術者派遣への転職がよぎることは少なくない。
「生涯エンジニアでいたい」
家族の反対があった場合、この強い気持ちこそが一番なのだ。

後記

20年ほど前。私は、新卒で入社した一部上場の商社を退職し、WEB業界に転職した。
180度異なる業界への転職に周囲は困惑・反論したが、その理由は「WEB業界」が漠然と未知なる存在だったからだ。
当時Googleもアマゾンも知られていない時代。今では想像もつかないが「WEBは一過性のメディアに過ぎず紙媒体やマスを超えることは無い!」「ネットでモノを買うなんて考えられない!」という意見が、マジョリティだった。
しかし、私も含めそこに関わる者はWEBの未来について語り、それが理想論だけで終わらないことを確信していた。
保守的な市井の冷ややかな温度感を無視して突き進んだWEB業界はその後産業革命になぞらえるまでに成長し今に至る。

物事、関わる人とその外側にいる人~それがたとえ薄皮一枚程度の外側であったとしても~はかくも認識が異なるのかと、今当時を振り返ってみても驚きがあるが、この「技術者派遣」業界でも同様であることを、今回のアンケートでも垣間見ることができた。
組み込み制御、FPGA、センサセンシング、ブロックチェーン、データサイエンス、サイバーセキュリティ・・・一つの企業でこれほど多様なジャンルの案件を抱え、かつ取引業界も自動車、宇宙、IT・・・様々ある。それに魅せられてその門を叩く者も多いことはアンケート結果からも明白だ。
「技術者派遣は誤解が多い」
この言葉が過去のものになったとき、日本の製造業とそこに従事する労働者にも革命が起きると願う。

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