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2020.02.07(更新日2020.04.01)

中田喜文の「エンジニア。データからはこう見える!」技術者の給料って高いの?

#エンジニア人口 #中田喜文

同志社大学STEM人材研究センター長の中田喜文です。 本コラムでは、日々技術者について研究を進める中で出会った色々な数字を、毎月1回程度ご紹介しています。今月は人手不足をテーマにご説明します。 今月からは3回にわたり、皆さんの給料の話です。サラリーマンにとって給料は優先順位の高い関心事。そこでクイズです。今月のクイズは、順番当てです。

技術者、高校教師、課長。この3つの職種を、年収の高い順に並べてください。

下のア)イ)ウ)の内、正しい順に並んでいるのはさてどれでしょう。ただし、日本の給与は、いくら実力主義だ、とは言え、未だ性別や勤続年数、あるいは経験年数に影響を受けています。そこで、対象を少し絞って、男性の中年層(35歳~44歳)をイメージしながら給与の水準を考えてください。

ア)課長>技術者>高校教師
イ)高校教師>課長>技術者
ウ)課長>高校教師>技術者

この選択肢の正解を見つけるポイントは、高校教師の位置です。高校教師は、皆さんより稼いでいるでしょうか?もしかすると、皆さんの上司よりも稼いでいるのかも? 図1を見てください。

クイズの3職種を含む10職種の年収を高いものから順に並べてみました。バーの上の数字は、課長の平均年収を100とした時の指数です。高校教師の年収は84で、課長よりは低いものの、73のSEや、70の技術者よりは高いです。ですから、正解はウ)です。
この図を見て皆さんはどんな思いを持たれたでしょう。医師が課長より5割高く、SEや技術者が課長より3割低いのは、何となく想定できたかもしれません。専門職とは言え、理容・美容師や調理師が60前後と4割低いのも、技能習得や就業の難易度から考えると、妥当な水準、でしょうか。しかし、国が違うと、職種間の給与関係はずいぶん異なります。

図2は、図1の日本の年収指数グラフにアメリカの対応する男性35歳~44歳の職種年収指数をピンクの線で上書きした図です。日本と同様に課長を100としたときの指数で、日米の絶対額比較ではありません。日本とアメリカの違いは何でしょう?各職種のピンクの点と青色のバーの頂点の差に注目してください。

ピンクの点が青バーより高く、この差が+なら、アメリカの方が日本よりその職の他職種と較べた相対年収が高く、逆に青バーがピンク点より高く、差が-なら日本の方がその職の相対年収が高いことを表します。では、日本の方が相対年収の高い職業は何でしょう?左から順に並べると、高校教師、臨床検査技師、理容・美容師、通信機器組立工、そして調理士の5職種です。逆にアメリカの方が相対年収の高い職は、医師、薬剤師、SEそして技術者です。
つまり、アメリカと比較すると日本は、高校教師を除くと専門性の低い職種の年収が専門性の高い職種に対して相対的には高く設定され、逆に専門性の高い職種の年収が相対的に低く設定されていることがわかります。
これは、日本の給与は、専門性の高さやスキルの希少性もさることながら、最初に述べたように、勤続年数や経験年数の影響を受けやすく、今でもいわゆる年功序列文化が根付いていることが職種間の給与差を小さくする方向に作用している可能性があると言えそうです。
私がセンター長を務める同志社大学STEM人材研究センターの目的の一つが、「科学技術の領域で活躍する方々がより創造的に活躍できるための環境と施策の構築に資する」研究を行うことです。日本の科学技術の発展のためにも、日本における技術者の処遇、特に給与の決まり方を解明する研究を行っていきたいと思います。

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