2021.02.03
「知らなかった」では済まされないセキュリティの世界《第四回》止まらない・・・!増大傾向のセキュリティ市場。ツール・サービス・人から見えるニーズの変化
#サイバーセキュリティ #セキュリティ人材 #アンチウイルス #動作監視 #FW #暗号化 #アクセス管理
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2021.02.03
#サイバーセキュリティ #セキュリティ人材 #アンチウイルス #動作監視 #FW #暗号化 #アクセス管理
インターネットが市民権を得て、数十年。常にセキュリティの問題を抱えてきました。
セキュリティ被害は一部の人に降りかかる災難、と思われがちですが、実は身近な問題として存在しています。
サイバーセキュリティの最前線で取り組むテクノプロ・デザイン社の前田 裕基氏に、ツール・サービス・人におけるサイバーセキュリティ市場についてお話しいただきました。
増大するセキュリティ市場は、一方で企業にも新たなコストやリソースの増加を意味します。経営層にとっても避けては通れないその実態について深堀します。
2019年度新卒でテクノプロ・デザイン社に入社。
約4カ月のサイバーセキュリティ研修と2カ月OJT期間を経て現在はセキュリティ診断業務に配属。Webアプリケーションや各種サーバ、ネットワークの脆弱性診断業務を担当。
趣味はシューティングゲーム、将棋観戦、カラオケなど。
昨今では以前に比べ、インターネットサービスやIoTが普及拡大しており、それに伴いサイバー攻撃も増加傾向にあるのが現在の状況です。各企業はサイバーセキュリティを意識せざるを得ない状況であり、サイバーセキュリティの需要は日々強くなっています。
こういった現状からサイバーセキュリティの市場規模は年々拡大しており、将来性も明るいと言えます。
さらに、2021年2月現在コロナ環境下においてテレワークが大幅に普及したこともサイバーセキュリティへの意識を高める結果となっています。
では、具体的な数字とともにサイバーセキュリティの市場規模を見ていきましょう。
NPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)が発表した「2020年度 国内情報セキュリティ市場調査」による各年ごとの実績値は以下のように推移しました。
ツール市場 | サービス市場 | 合計 | |
---|---|---|---|
2017年度 | 5,674億円 | 5,194億円 | 1兆868億円 |
2018年度 | 5,871億円 | 5,389億円 | 1兆1,260億円 |
2019年度 | 6,729億円 | 4,745億円 | 1兆1,475億円 |
2020年度 | 6,639億円 | 4,718億円 | 1兆1,357億円 |
このようになると予測されており、コロナショックの2020年を除き、数字から見ても市場規模が年々拡大しているのが分かるかと思います。
次にサイバーセキュリティ市場についてさらに深堀していきます。
まずは、情報セキュリティツール市場でどういった製品が主流になっているのか内訳を見ていきましょう。
・エンドポイント保護管理製品が1,697億円で27% (アンチウイルス、EDR、ポリシー管理,動作監視)
・ネットワーク防御・検知/境界線防御製品が1,683億円で26% (FW,WAF,VPN,IDS/IPS,UTM/SIEM)
・コンテンツセキュリティ対策製品が1,709億円で27% (DLP,DRM,暗号化,メール/セキュリティ対策,URLフィルタリング,脆弱性検査)
・アイデンティティ・アクセス管理製品が1,327億円で21% (認証[生体]デバイス,アクセス管理,PKI)
もっとも伸び率が高かったのは「ネットワーク防御・検知/境界線防御製品」で15.7%増
2020年度の予測値では「アイデンティティ・アクセス管理製品」が一番伸び率が高いと予測されています。
よって2021年の市場は「ネットワーク防御・検知/境界線防御製品」「アイデンティティ・アクセス管理製品」が引き続き伸びると予測されます。理由としては、テレワークが大幅に普及したことにより自宅、会社間でデータを暗号化して安全に送受信するために利用されるVPN製品を導入する企業が増えており、それに伴うアクセス管理や認証における物理デバイスの需要が高まっています。それらの環境が整うと、社外でノートPCやタブレットを用いて業務を行うというケースに対応すべく、ノートPCやタブレットの端末でセキュリティ対策を行うEDR製品への関心も徐々に高くなっています。
次に、情報セキュリティサービス市場の内訳になります。
・コンサルティング/診断サービスが1,657億円で37% (コンサルティング,監査・評価,診断,規格認証)
・マネージド・運用サービスが1,986億円で44% (SOC,インシデント対応/フォレンジック,OSINT情報提供)
・周辺サービスが868億円で19% (電子証明書、教育、資格支援、保険)
もっとも伸び率が高かったのは「コンサルティング/診断サービス」で16.6%増。
2020年度の予測値では、「周辺サービス」が13%減と予測されています。これはコロナ渦により対面が必要なサービスが忌避され、減少に転じたためです。
この傾向は2021年も続くと思われますが、主な減少項目の「リテラシー教育」についてはオンライン対応への移行が想定されるため短期間で増加へ転じると想定できます。
「保険」については、コロナ渦の中でサイバー攻撃の被害が拡大していることから、いずれは増加に転じていくと想定されますが、政府主導のセキュリティ対策『ゼロトラスト』への対応を優先される企業が大多数と思われることから緩やかな推移になると想定されます。
サイバーセキュリティ市場においてセキュリティツールやサービスの規模は環境に応じて年々増加している事は分かりましたが、このようなサイバーセキュリティ市場でも一つ問題になっていることがあります。 それはサイバーセキュリティ人材についてです。
2016年に経済産業省が出した調査結果ではセキュリティ人材が2020年では20万人不足するとあります。この不足の要因として挙げられるのは、国にもよりますが日本では「キャリアパス不足」となっています。
諸外国と比べて平均勤続年数が長いため、サイバーセキュリティ人材が複数の企業等を移りながら専門性を高めてキャリアアップする諸外国との違いが、セキュリティ人材不足の要因の一つとなっています。
現在不足しているセキュリティ人材の種別として、ログの監視・分析を行う人材が1位となっていますが、アウトソースが可能と考えられる業務についてまで自組織に不足していると認識していると見ることができるため、各企業がサイバーセキュリティに関して自社で行うべき業務と外部に委ねる業務との切り分けができていない可能性があると言えます。
こういった現状からも各企業がサイバーセキュリティに対して正しく向き合い対策していくことでセキュリティ人材不足も解消されていくのではないかと思います。
ここまでサイバーセキュリティ市場についてお話してきましたがいかがでしたでしょうか。 サイバーセキュリティ市場はこの厳しいご時世でもじわじわと成長し、市場規模を拡大しています。ほかの市場と比べてみても比較的明るい市場なのではないでしょうか。しかし、抱える問題も少なからずあるのが現状です。お客様に安心安全なサービスをお届けするためにもセキュリティ業界の活性化は必要不可欠です。そのためにも、各企業が正しい知識を持ってサイバーセキュリティと向き合っていく必要があると言えるでしょう。