2021.07.09
AI機能搭載 飼育牛モニタリング機器・IoTシステム 本研究のソフトウェア設計の技術的考察(1)
~研究全般の概要と社会的意義/背景~
#産学連携 #東京工業大学 #エッジデバイス #ビッグデータ #データサイエンス #IoT
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2021.07.09
#産学連携 #東京工業大学 #エッジデバイス #ビッグデータ #データサイエンス #IoT
研究内容の説明は他の方に譲るとして、テクノプロの共同研究の意義や背景を技術社員がどの様に活用できるのか基にご説明いたします。
デザイン社に入社後、多くの場合、技術社員は企業常勤業務となりますが、大学との共同研究は技術社員の働き方の多様化につながると考えています。
研究業務では企業常勤業務では得難い、0から1を作り出すことが経験でき、オンリーワンのエンジニアを目指すことができる土壌です。
研究開始時にテーマは存在しますが仕様書は存在せず、なぜこの研究をしなければいけないのかを自分の腹落ちするまで考え、必要な仕様を考え出していくことになります。
自分が腹落ちするまで考え抜くということは想像以上に大変な作業で、テーマに興味が無ければモチベーションすら沸いてきません。テーマに対する理解を深めることでモチベーションの問題はある程度解決することができます。そのためには、多くの人の意見を聞き、先人たちの残してくれたフレームワークを活用することが大切です。
PEST分析やSWAT分析などのフレームワークは研究初期では数多く試しています。競合の調査やKPT分析も試しました。
研究から製品化に繋げる方法も初期の時点で模索しています。
研究に没頭しても経営者目線を持つことは難しいと考えられます。
事業計画書の作成を試し、お金の計算が全くできないことで現実に打ちのめされました。
技術社員の知識だと技術的設問に回答はできても、金銭的な設問に回答できません。
会社を作り製品化したところで資金が足りず、世の中に対して責任を持ち製品を責任をもって供給し続けることが難しいのです。
民間のコンサル会社に相談に乗ってもらい、研究テーマに対しては肯定的な意見をいただけても、収益化に対するハードルは高いことを指摘されました。
収益化の見通しを立て辛く、企業が大金を投じて研究開発できないこと研究することも大学の役割です。
伊藤研はモノづくりは得意ですが、実験に必要なのは動物である牛、人に付けて試験するわけにもいきません。
コンセプトを証明することが最優先と考え、大学内でのアウトリーチを実施し、東工大と信州大の先生方との繋がりを大事にしました。
特に信州大学の先生には牧場や実験用の牛を貸して頂けることになり、実験の目途を立てることができました。
これらの経験から、世の中に役に立つ研究であっても、協力者を募るのは簡単ではなく、コンセプトが実現した後も収益化へ結びつけるには途方もなく長い道のりが必要であるということを体験致しました。
研究テーマはAI搭載飼育牛モニタリング機器システムの開発です。
数年前に調査された基礎的な牛の生体データや論文が存在していますが、着任先の伊藤研ではほとんどノウハウのない状態での新規プロジェクトです。
研究開始にあたり、プロジェクト管理の方法を決める必要がありました。
メカ/エレキ/ソフトの異分野の共同作業であり、各分野の作業フローをどのタイミングで結合するかなど、プロジェクト管理上の課題も山積です。
最初はウォータフォールモデルでのプロジェクト開始を計画していました。ウォータフォールモデルの利点は作業進捗が誰が見ても判りやすく、進捗管理に都合がいいのですが弱点は手戻りが発生すると実施中の工程が全てやり直しになるのが弱点です。
メカ/エレキ/ソフトの異分野の成果物の進捗ですから、例えば筐体を作ったものの、基板が格納できず、センサ値が狂ってしまうという状態になれば、全て最初からやり直しです。
新たな論文の出現により、使用するセンサそのものが変わったという事態が起きれば結合前にメカ/エレキ/ソフト全て作り直しです。仕様変更や技術革新が日々起きる研究業務ではウォータフォールモデルを取り入れることは冒険的となります。
一方、アジャイル型開発と呼ばれる手法があります。優先度の高い要件から順に開発を進めます、「プロジェクトに変化はつきもの」という前提で進められる開発ですので仕様変更に強く、プロダクトの価値を最大化することができます。
変化に対応するため、各自の進捗毎朝20分程で共有するデイリースクラムを実施していまが、問題があり今も解決できていません。
タスクを人にアサインすることがアジャイル型開発の特徴の一つですが、最も効率よくプロジェクトを進めるため、当然ながら当該タスク完了スキルが一番高い人をアサインすることになり、必然的にメカ/エレキ/ソフトの専門分野の担当者がアサインされてしまうのです。
研究業務を進捗させるため長期的にみると、自分の分野外の仕事にも取り組んでいく必要があります。
どうしても守らないといけない締め切り日があることは研究業務と企業業務との共通点です。締め切り日から逆算し、やるべきことを洗い出し、見える化し、スケジュールに落とすスキルが必要です。
企業常勤業務であればPMOでプロジェクト管理のひな型が作られ、PLはひな型から逸脱なく仕事することを求められます。
大学との共同研究という場ではPMOが存在しない代わりに、アローダイヤグラム、ガントチャートなどの様々なフレームワークを試すことができました。研究成果をコスト換算することが難しいことから、EVMを実施できていないのが心残りです。
一番効果があったと感じているのはアローダイヤグラム(図1)です。
アローダイヤグラムは新QC7つ道具のひとつとして数えられますが、複数の独立した作業や工程が連続して実施された時、作業の日程計画を図形と数字で表現するフローチャート図です。メカ/エレキ/ソフトの異分野作業のスケジュールと、結合時期を表現することができました。
設計思想は大きく次の通りです。
共同研究時に備わっている社会人で積み重ねた経験に加え、研修会、ワークショップ、シンポジウム、学会、勉強会への参加、論文検索等のアカデミック領域のインプットを続けることも、研究のアウトプットを出す上で重要です。
1987年神奈川生まれ。
データベース/業務ソフトエンジニアとして経験を積んだ後、テクノプロ・デザイン社に入社。
共同研究先の東京工業大学では、多変量解析を用いたAIの研究開発や、生体リアルタイムセンシングロガー製造などに従事。
ビッグデータを蓄積するクラウド開発をお手伝いし、協力会社やスタッフとの調整にも携わる。
趣味はボーリング。