FPGAに関わるASIC屋が、今すぐ知っておきたい量産FPGAの世界（5） ASIC屋は量産FPGAを設計できるのか？

話者紹介

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  • 髙島 淳～ASICエンジニア株式会社テクノプロ　テクノプロ・デザイン社

    1987年よりLSIに携わる。入社後、論理シミュレーションし試作品の作成、LSIのテスターで電気的特性の評価といった一連の業務を担当。その後タイミング設計と論理設計を15〜20年間従事する。
    当初はgate arrayだったが、その後特定用途向けのASICの開発、論理設計だけでなくお客様との折衝も担当し30年ほど関わる。

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  • 坂野 祐史～FPGAエンジニア株式会社テクノプロ　テクノプロ・デザイン社

    半導体メーカーにてLSI設計開発
    主にキャッシュディスペンサー・自動改札機・航空券発券機・PCのCD-RAMドライブなどの製品に関わる。
    2000年10月　テクノプロ・デザイン社に入社
    ・自動車向け、エンジン制御・エアバッグ　Etc　マイコン設計開発
    ・ディスプレイ搭載回路基板設計開発、FPGA設計に従事。
    仕様設計-詳細設計-試作-量産まで携わる。 また、現地中国人（上海）設計者指導、教育、アドバイザーまで様々なプロジェクトに関わる。 ・2017年4月　CDA（キャリアデザインアドバイザー）着任
    支店技術部組織構築補助、技術社員（エンジニア）のスキルアップ支援

  ファシリテーター紹介

  北原 ー  真樹

  株式会社テクノプロ　テクノプロ・デザイン社
  1997年　株式会社テクノプロ　テクノプロ・デザイン社に新卒入社
  人工衛星回路設計・ECU装置設計など約20年経験
  現在、採用部門部長

  ASIC屋は量産FPGAを設計できるのか？

  北原 ー  ASIC屋がFPGAをやると動かなくなることがあると

  坂野 ー  ありますね。ASIC屋はカツカツのタイミングでHDL記述を書く場合もありますが、FPGA屋に言わせると、もっとゆるく書きませんか？と思うわけです。

  北原 ー  FPGAはそこまで追い込んで設計してはいけない、というポイントは何ですか？

  坂野 ー  私は多相クロックだと思います。
  位相が異なるクロックや様々な周波数で、バタバタと処理を行いたい、こういうものはFPGAではやらない方が良いですね。

  髙島 ー  ASICでは、そういうケースありますね。クロックは一つとは限らないので。
  例えばマイコン一つとっても中にPLLを持っていて、それとは別に全然クロックの違うリアルタイムクロックというものがあったり。
  マイコンでは求められる機能が色々あり、それに応じてクロックが異なる、こういうケースは普通にあります。

  坂野 ー  私もマイコンやっていたからわかるのですが、CPUとその周辺機器ではクロックが異なりますね。

  髙島 ー  そうなんです。違うクロック同士の同期設定はやってはいけない、というルールはありますね。

  坂野 ー  ただ、私が某社にいたとき、実施はしなかったのですが二相クロックを検討したことがあります。
  ある周波数があって、もっとスピード感をもたせたいと。 で、位相をずらしたクロックをもう一本用意しました。

  

  フリップフロップを置いて、上図の1番で叩くんですよ、次のデータを同期したい時は、2番で叩くんですよ。そうすると1番のクロックが1周期終わるまでに2つのことができる、そうすると2倍早くなります。
  こういう設計をFPGAをやろうと思えばできるのですが、やってはいけないと思っています（笑）
  FPGAの設計は単相設計であるべきだと思います。

  髙島 ー  非同期設計において、データの受け渡しはあってもいいのですが、クロックを受けた上記２と１との間に論理を入れてはいけない、というルールに反するということですよね。
  論理をいれないで２で叩くffを後ろに2段入れて、ようやくデータがとれる、こういうのを「ff2段受け」というのですが、これをしておかないと「メタステーブル」になってしまいます。

  坂野 ー  叩いた瞬間、ジッターが発生し永遠に止まらなくなりますね。

  髙島 ー  そう、なので2段受けしなければならないので結局スピードは遅くなります。なので、この設計はやってはいけないんですよね。

  北原 ー  ASIC屋さんはFPGA設計にはスムーズに入っていけるんですかね？

  髙島 ー  知らない話は多かったですが、この話を聞くといけると思います。

  坂野 ー  髙島さんのような優れたASIC屋さんはFPGAにたくさん疑問を持つと思うんですよ。本当にこんなの動くのか、って。 しかし、全然大丈夫かと。 疑問に当たっても、メーカーから聞くことで解消できます。クロックメッシュになってるからこうしようとか、エリアに分かれてるから配置配線はこうしようとか。

  北原 ー  設計のしやすさ、という点ではどうですか？

  髙島 ー  皆で無理のないルールを決めて、足並みを揃えて設計するのであれば難しいことはいないと感じました。人によってのばらつきもなくなるし均一の製品が出来上がるのかなと思いました。

  北原 ー  高速になればなるほどFPGAの方が便利でやりやすいんですかね。 回路設計のスピードが早くなってきて、使いやすくなってきた。

  坂野 ー  FPGAの方が劇的に開発期間は短いです。
  コストからすると、FPGAは1個あたりの単価は高いです。量産用として買っても1個1000円しました。ただ、ASICだと量産したら1個100円もしないでしょう。
  だから、いろんなラインナップを見ていかに安いデバイスを買って機能を省略したり、工夫をして使うかがポイントかと思います。

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